教室を出て、私は呆然とした。
左右どちらを見ても廊下が続いている。
「えっと…とりあえず行くしかない、よね?」
独り言のように呟くと、私は廊下を歩き始める。
ふと窓から外を見ると、そこには人は一人もいなかった。
自動車も自転車も走っていない。
やけに静かに感じた原因はこれらしい。
やはり、ここは現実ではないようだ。
そう認識しながら、私は廊下を歩き続けた。
「…まずはここから探していこう」
しばらく廊下を歩き続けたところで、何にも出会わず、何の変化も見込めないため、私は教室も調べることにした。
ちなみに、ここまで何度か骸にシロウサギのことを訊ねてみたが、どこへ行ったとかどういう姿だとかは教えてくれなかった。
目の前の教室の引き戸を開けてみるが、そこにはなんの変哲もない教室があった。
一応中へ入って何もない事を確認するとその教室を後にする。
こんな作業をどのくらい続けたらいいのだろう、と思いながら私は教室を一つ一つ確認していった。
そしていくつ目かの教室に人影があった。
…人影とは言わないか。
その人物の頭には白い耳が二つ、天に向かって伸びている。
「もしかして、あれがシロウサギ…?」
一緒にいるはずの骸に尋ねたが、彼からの返事はない。
不思議に思い振り返ると、そこに彼の姿はなかった。
「え?あれ??」
直前まで会話をしていたのだから、一緒にいたのは間違いない。
いや、骸の姿をしていたのだから幻覚だったという可能性もある…かもしれない。
幻覚であれば私が気づかないとは思えないのだが。
どこへ行ったのか辺りを見ていると、先ほどのシロウサギが呟いく。
「足りないなぁ…」
何の事かと振り返ると、シロウサギは教室から出るところだった。
――とにかく、シロウサギを追いかけなきゃ。
なぜかその時の私の頭にはそのことしかなかった。
そして私はシロウサギを追いかけ、廊下の奥へと進んだ。
それが始まりとも知らずに…。