が目を覚ますと、真っ白な天井が視界に入った。
医師と看護師のものらしい会話が耳に入ってくる。
――ああ。病院か…。
と納得してみたものの、にはなぜ自分がここにいるのか思い出せなかった。
というよりは、ここへ来たという記憶がなかった。
少し考え込んでいると、少年二人がのベッドへと来た。
「痛みはない?」
「はい、大丈夫です…」
きょとんとしながらも、聞かれた事には答えた。
「あの、私、なんで…」
「君とあの家の奥さんが倒れていたので救急車を呼んだんですよ」
と笑顔で骸は答えた。
それから少しの沈黙があり、決心したようには告げた。
「私、夢を見ました。雲雀さんと子どもたちの夢を…」
そう言って、は夢の内容を話した。
子どもたちと、雲雀が話していたこと。
子どもたちが泣きじゃくり、が抱き締めてやったこと。
そして、しばらくして笑顔になった子どもたちがどこかへ行ったこと。
夢で見たことを事細かに話した。
「最後にありがとうって言われたんです。私、何もできなかったのにありがとうって…」
「…」
全てを話し終え、は涙を流す。
今までの辛さ、
何もできなかった悔しさ、
そしてたくさんの犠牲者に対する謝罪。
そんな様々な感情がの中で溢れた。
しばらくして泣き止むと、は小さな声で訊ねた。
「雲雀さん…あの、最後に私が傷つけた人は…」
「…そんな人は、いない」
「え?」
「君が傷つけた人間はいない…ことになってる」
「どういう、ことですか?」
「僕にもわからない。ただ、僕と君以外はみんなこのことを忘れているみたいだよ」
こいつも違うみたいだけど、と彼は骸を指しながら付け足した。
どちらにせよ、にとって自分のしたことが消えたという事実は変わらない。
それは言い知れない恐怖としてを襲う。
「…なんで?」
「きっと、彼らが君のことを助けたんですよ。彼らにとって君は特別だったようですから」
「特別…」
その言葉を噛み締めるように呟く。
「そっか…」
「なかったことになったとはいえ、忘れない方が賢明でしょうね」
「え?」
「クフフ…僕はそろそろ行きますよ。それでは」
そう言うと、骸は病室を後にした。
残されたと雲雀は互いに顔を見合わせる。
「…何だったんでしょうね?」
「…さあ」
「あの、雲雀さん…」
「なに」
「ありがとうございます!」
そしては飛びきりの笑顔を彼に向けた。
ねえ、お姉ちゃん?
もし暇なら…
僕らと一緒に遊んで?