ザーーーー
ピチャン…ピチャン…
水の滴る音と雨が窓を打つ音とが暗い室内に響く。
照明は全て割れ、辺りは赤い海が出来上がっていた。
「…な、ぜ…」
息も絶え絶えに女性が言う。
今ここにある人で動けるのは彼女と少女だけのようだ。
女性の言葉に少女は笑みを浮かべる。
「なんでかって…?わからない?」
それはとても綺麗で、見るものを恐怖させる残酷な笑みだった。
「あなたはこんなことする子じゃ…」
スッ…
が手を動かすと、一人の影が倒れた。
首からは大量の血が噴き出している。
「そうね。たしかに私はこんなことする子じゃなかった…」
暗闇の中、一人たたずんでいた少女が自嘲気味に呟く。
「だけど、こんな風にしたのはあなた方なんだよ?」
クスクスと笑いながら、はもう動かない院長に告げる。
「雲雀さん…」
その名を呟く彼女の表情はとても悲しげだった。
「…やっとわかったよ。私がこんなことをする理由…」
この場にはいない雲雀へと向けて彼女は言う。
「これは、復讐なんだ…」
は天を仰ぐと一筋の涙を流した。
それは自分が命を奪ってしまった人々への謝罪の涙か。
それとも、罪もなく奪われた子供たちへの追悼か。
彼女が流した最後の涙が頬を伝い地面に落ちた。
それと同時には決意をする。
――私は、復讐を遂げる。だから…
「私に力を貸してね…?」
それはそこにはいない“彼ら”へ向けての言葉だった。
――もう戻れない。戻らない。