コツッコツッコツッ

誰かが少女の居る所へ近づいてくる音が聞こえてくる。
はその音で目を覚まし、周囲を見回した。
建物自体や内装はとても傷んでいて、ここが廃墟となってからかなりの時間が経過していることを物語っている。

「おや、目が覚めたんですね」

何でここにいるのかが考えようとした時、不思議な髪型をした少年が声を掛けてきた。
をここへ運んできたのはきっとこの少年だろう。
彼以外に人の気配はしていない。

よく見るとその少年は赤と青のオッドアイで、とても整った顔立ちをしている。
しかしその雰囲気は何となく近寄りがたく、は話しかけるのを一瞬躊躇した。

「あ、あの…」
「どうかしましたか?」
「えっと、その…」

聞きたいことをうまく言葉に出来ずにいると、少年が何か納得したように話し始めた。

「あぁ。ここにいる理由なら、あなたが倒れていたから僕が連れて来たんですよ」
「え?倒れて…?」
「ええ。何があったんですか?」
「それは…」

少しためらいはしたが、は少年に一部始終を話した。
根拠はないが、この少年には話しても大丈夫な気がしたのだ。
そして、彼はが話し終えるまで一言も発しなかった。

「…ということなんです」
「なるほど。…少々厄介ですね…」
「え?」
「いえ、何でもありません」
「そうですか…?」

ぼそりと呟いた彼の言葉に聞き返すと、少年は綺麗な笑顔で答えた。
そこではまだお礼を言っていないことに気が付いた。

「あ!そういえば、ありがとうございました。えっと…」
「六道骸です」
「六道…骸さん?」
「はい」

――六道骸。
何故かには聞き覚えのある名前のような気がした。

「ところで、あなたのお名前は?」
「あ、です。
ですか・・・。これも何かの縁でしょう。」
「え?」
「僕に出来ることであれば何でもしますよ、
「本当ですか!?」

素直に喜ぶ
だが、すぐにそれは彼を危険な目に合わせてしまうことだと気が付く。

「あ、でも…」
「あぁ、僕なら大丈夫ですから気にしないでください」
「ありがとうございます」

骸の笑顔につられて笑顔を浮かべる
しかし、は骸が彼女をここへ連れて来た本当の目的に気が付いていなかった。
骸は彼女が雲雀の弱点となることを知っていて連れて来たのだ。

――しかし困りましたね・・・。まさかこんな事になっているとは…

笑顔は崩さずに骸は考えていた。
どうしたら彼女を救い出し、利用することが出来るのか――と。

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