真っ暗な空間をは走っていた。
――もう何度同じ夢を見ただろう…。
あの日から眠りにつくといつもこの夢を見ている気がした。
暗い闇の中を必死になって走り、”何か”から逃げている夢。
“何か”が一体何なのか、どういうものなのかはわからない。
ただひたすらにそれから逃れようと走り続けて最後には光が見え、夢が醒める。
だからきっと今度もそうだと彼女は信じていた。
――ほら、見えた。
の走っている先には暗闇の中で強く明るく輝いている、星のような光が一つあった。
いつも通りの夢の展開。
しかし、いつも通りなのはここまでだった。
光に向かって走っていると、突然空間が歪んで人影が現れた。
それはの見覚えのある人物で、もしもこんな状況でなければ素直に喜んでいるところだ。
しかし今、を追っている”何か”はすぐ近くまで迫ってきている。
このまま進めば、いや、例えが方向を変えたとしても目の前の人物を巻き込んでしまう。
「雲雀さん!!逃げて!!!」
がそう叫んだ瞬間、少女は眩しいくらいの光に包まれ目が醒めた。
呼吸が荒く、心臓の鼓動が早い。
あんな夢を見たのだから当然だろう。
――どのくらい寝てたんだろう…?
辺りはすでに暗く、雨が降り始めていた。
ある程度落ち着いたところで体を起こすと、近くに子供が座っていることに気が付いた。
「君、一人なの…?」
「ねぇ、一人なら一緒に……!?」
子供の前にしゃがみ込み、顔を見た瞬間には凍りついた。
ドクンッドクンッドクンッ
心臓がうるさく脈打つ。
それとともに急に視界が狭まり、体が重くなる感覚に襲われる。
彼女が見たその顔は、すべての始まりだった…。