あれから数時間。
はディスプレイに向かっていた。
薄暗い室内で唯一明るい光を放つディスプレイには次々と文字が打ち込まれていく。

――あと少し。もう少しで…

そう考えながらキーボードをたたいていく。
未来の彼女の記憶通りであればもうすぐ扉が開くはずであった。
最後の入力を終えた瞬間、ピーという電子音と共にロックの外れる音がした。

恐る恐る扉を開く。
そこにはやはり見たことのない施設が広がっていた。
どちらへ進めばいいのかわからないため、とりあえず騒々しい方へと足を向ける。
誰かがいるといいのだが、と思いつつ歩いていくと人影が見えた。
思わず物陰に隠れつつ様子を伺う。

この時代の彼女が証拠を残すことまでできた施設であるため、敵地である可能性は極めて低い。 しかし、万が一ということもあるためは用心することにした。

どうやら、その場にいるのは綱吉とその守護者たちのようだった。
安堵すると同時に馬に乗った青年の登場に動揺した。
僅かに聞こえる声では匣(ボックス)兵器がとか、リボーンが師であるということだけが彼女にもわかった。
彼女は驚きつつも青年の姿を自身の情報と照らし合わせる。

――確かあれは…キャバッローネのボス、ディーノ。

キャバッローネのボスとボンゴレの十代目の仲の良さは彼女も聞いたことがあった。
なるほど、と一人納得するとさらに息をひそめる。
キャバッローネのボスにリボーンまでいて、全てを知ってしまった彼女は"情報"を隠し通せる自信はない。
見つかることは非常に厄介だった。
しかし彼女が陰から様子を伺っていると、急にリボーンが殺気を放ちながら彼女の方を向いた。

「誰だ?」

彼の放つ殺気に命の危険を察した彼女は物陰から出ていく。
彼女の姿を見て第一に声を発したのは綱吉だった。

「え…さん!?」
「ボス…」
「なんでさんがここに?」

どこからどこまで説明したものかと逡巡した彼女だったが、すぐに十年バズーカで来た経緯だけを説明した。
それ以上は"計画"の妨げになる可能性があるため話すことはできないと判断したのだ。
幸い、彼らにも深く訊ねられることもなかったため下手な嘘をつくこともなく済んだ。
一通り話し終えた彼女は、綱吉らから現在の状況を確かめることにした。

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