放課後。
は一人屋上に来た。
フェンスの側まで行くと、静かに町を見下ろした。
――これが並盛…私が、私たちが巻き込んでしまった町。
辛そうに唇をかみ締めているに背後から誰かが近づく。
振り返ると、ボンゴレ十代目ボス、沢田綱吉がいた。
「…ボス」
「雲雀さんに聞いたんだけど、今日転校してきたんだよね?」
「ええ」
「どうだった?」
「特に問題はありませんよ」
は笑顔で答える。
そう、確かに何も“問題”はなかった。
学校の作りもすぐに覚えられたし、勉強もわからないところなどない。
クラスの人間の名前もはすぐに覚えた。
情報屋である彼女にはそれらに苦労することはない。
「そっか。あのさ、オレが気にすることじゃないかもしれないんだけど」
「なんですか?」
「友達とかは…できそう?」
「…なぜ?」
「なぜって…」
困惑した表情を浮かべる綱吉。
ああ困らせてしまったか、とは笑顔を浮かべて綱吉に答えを返す。
「ふふ。大丈夫ですよ、なんとかやっていけます」
「そっか。それならいいんだ!それじゃ、オレは帰るね!」
そう言うと綱吉は慌しく屋上を後にした。
「なんとかやっていける、か…」
は呟くと自嘲を含んだ笑みを浮かべる。
綱吉にはそう言ったが、彼女は友達などを作る気はなかった。
「私はいずれここから去るのですから…友達など要らないんですよ、ボス」
その声を聞くものは誰もいなかった。