それは、少女と少年が出会った時の話。
少女が少年の親に養子として引き取られた時の話。
「、今日から私たちがあなたの家族よ。」
少女に向けて女性がほほ笑む。
少女の目の前には女性とその夫、そして少女より少し年上のように見える男の子がいた。
やさしそうな人たちだ、と少女――は思った。
「よろしくお願いします。」
少女が深々と頭を下げると、女性は困ったように笑いながら彼女の頭をなでる。
「もう家族なんだから、そんなに気を遣わなくていいのよ?」
なんだかその手が温かく感じて、葵は嬉しくなった。
初めてその一家に出会ったのは数日前。
その時も優しそうでいい家族だと思っていた。
やはり、自分の直感は正しかったのだと幼いながら思い、嬉しくなる。
「何か困ったことや、してほしいなってことがあったら言ってね。」
そう言ってもう一度の頭をなでると、女性はご飯の支度をするとその場を離れた。
夫も、仕事がまだ残っている、とその場を後にした。
残されたのは、少年と少女だけ。
「お母さん。ご飯、何時くらいにできそう?」
「あと2時間くらいかな」
少年の問いに女性が答える。
現在の時間は午後3時。夕食ができるのは5時くらいなのだろう。
時計を確認すると、少年は母親に遊んでくると告げて葵の手を取る。
「あ、あの…」
「公園いこう」
「あの、お名前…」
「僕の名前は、。今日からのお兄ちゃんだよ」
「、おにいちゃん…」
の言葉に満足げに頷くと、は彼女の手を取る。
目指すは公園。
兄妹になった小さな二人は元気よく駆けて行った。
その日の夜。
がなかなかから離れようとしないため、二人は同じ部屋で寝ることとなった。
「。!」
「おにい、ちゃん…」
よほど怖い夢でも見たのだろう。
涙を浮かべる少女は酷く怯えていた。
そんなを安心させたくて、幼いながらには考える。
「、大丈夫だよ。悪い奴や怖い奴、お兄ちゃんが全部追い払うから」
「ほんとう?」
「本当だよ。何があっても、のことは守るよ」
「ありがとう」
ようやく泣き止んだ妹に安堵し、布団へ戻るように言う。
彼女が布団へと戻ったことを確認してから、少年も自身の布団へと潜った。
――は、僕が絶対に守るんだ。が僕のそばを離れるまで、ずっと。