「なぁ、今週の土曜って暇か?」
「暇だけど…突然どうしたの?」
が学校へ着いてすぐ、和谷が彼女のそばへ来てそう尋ねた。
鞄を下ろしながらが問い返すと和谷が笑みを浮かべた。
「いや、ちょっとな」
「ちょっとって?」
「放課後話す」
「え?ちょ、ちょっと和谷く――」
が和谷を引きとめようとした瞬間、タイミング悪く始業を告げるベルがなった。
仕方ないのではそのまま席に着き、今日一日を過ごすことにする。
放課後になるとすぐに生徒たちは帰宅したり、部活へ向かったりする。
そんな中、は和谷と帰るために校門で待っていた。
「悪い。待たせたな」
「ううん、大丈夫だよ」
和谷の姿を確認すると、彼女は彼の隣を歩き始めた。
少し歩き、ある程度人も少なくなったころ、が口を開いた。
「ところで、土曜日のことなんだけど…」
「ああ。あれな、どっか遊びに行かないか?」
「え?」
「メンバーはもう決めてるんだ。俺とお前とあと二人、男と女」
「…それって私の知ってる人?」
「片方は知ってるやつ…かな」
「誰?」
「それは当日のお楽しみだ」
「えー?」
が不満そうな声を上げる。
とほぼ同時に、和谷が声を上げた。
「あー!!今日師匠(せんせい)のところに行かなきゃいけないの忘れてた!!」
「え??」
「土曜の12時、駅前に集合だからな!」
「え?ちょっと…」
「それじゃ、気をつけて帰れよ!」
「わ、和谷君…」
の話を聞こうともせずに和谷は走り去る。
後に残されたは一瞬立ち止まっていたが、やがて家に向かって歩き出した。