「…?」
夕日の差し込む部屋の中に彼女の姿を探す。
と、庭に人影が見えた。
「ここにいたんですね、…」
ガラス戸を開き、車椅子に座っているに声をかけた。
すると彼女は驚いたように振り返る。
「あ、骸!おかえりなさい」
がふわりと微笑む。
その笑顔に笑みを返しながら、彼女の側に歩み寄る。
「何しているんですか?」
「夕日が綺麗だったから…」
そう言い遠い目をする。
「クフフ、本当に綺麗ですね」
「…ね、骸」
が僕の袖を引っ張り、それからベンチを見つめた。
――あぁ、向こうに座りたいんだな。
その可愛さに笑みを浮かべつつ彼女を抱き抱え、ベンチまで連れていった。
「ありがとう」
「いえ」
もっと頼っても良いくらいだと思う。
彼女の足は僕のせいで動かなくなったようなものなのだから…。
じっと彼女を見つめていると、彼女が薄着であることに気がついた。
「ほら、風邪引きますよ」
「ありがとう…」
着ていた上着をかけてやると、は少し照れたように俯いた。
その横に座り、僕もにならい夕日を見つめる。
「きっと、今日は星も綺麗に見えますよ」
「ん…そうだね」
そう言いながらがもたれてくる。
平穏な時間。
きっと彼女が怪我をしなければ得られなかった、幸せ。
「…」
「なぁに」
「君は…」
そこでつまる。
聞くのが、怖い。
否定されるのが、怖い。
僕を拒絶されるのが、怖い。
「骸…?」
「君は、僕を恨んでますか…?」
怖くての顔が見られない。
返事がくるまでのこの時間がとても長く感じる。
「そんなわけないでしょ。むしろ感謝してるんだから!」
何故か得意気に答えるに、何も言えなくなる。
それでも何か言わなくては、と思っているとが続けた。
「一緒にいてくれてありがとう」
「感謝なんて…君の足が使えなくなったのは…」
僕のせいだ。
僕が引き止めなかったから。
僕が共に行かなかったから。
僕が…僕のせいで彼女の足は…。
「それは骸のせいじゃないでしょ。相手のマフィアにやられたんだし」
「ですが…」
「それに足が使えないのは不便だけど、骸と前より一緒にいられるから幸せなんだよ」
そう言って飛びきりの笑顔を見せられてはそれ以上聞くことができない。
「…」
「ん?」
「愛してます」
今までとは比べものにならないくらいに。
本当に、本当に、心の底から。
「私も、愛してる」
そして僕らはどちらともなくキスを交わした。
――僕はずっと君と共にいます。
――君が、望むなら…。