※注意※
この作品はカニバリズムを扱っており、グロテスクな内容を含む作品です。
気分を害される恐れもあるため、苦手な方はご覧にならないようご注意ください。
また殺人等の表現もございますが、そういった犯罪行為を助長するものではありません。
そういったことから18歳未満の方の閲覧もご遠慮願います。

以上のことを踏まえた上、自己責任で閲覧ください。

透き通るような白い肌と、それを汚すように口元から滴る赤。
彼女は何とも形容し難いほど美しかったが、その顔には似つかわしくない血生臭い光景を生み出していた。

そのアンバランスさに僕は惹きつけられたのだと思う。

「…あなた、誰?」

彼女は大きな目をこちらへ向け、鈴のような声を紡ぎだす。
綺麗な声だな、と純粋にそう思った。

「六道骸です」
「そう」

僕には対して興味がないのか、素気なく答えるとその大きな瞳を再び手元のモノへと向けた。
少しして、ぐちゃりと音を立てながら少女はその手に持ったモノへとむしゃぶりついた。

「君は何と言うんですか?」
「…私は、

は一度食べる手を止め、名乗るがすぐに目の前のモノを食べることに夢中になった。

「さっきから何を食べているのですか?」
「…食べる?」
「これは…」
「ヒトの、腕。おいしいよ」

やはり、というか何と言うか。
彼女が差し出したそれは、そのしなやかな指先から人間の女性の腕のようだった。

こういう行為を“カニバリズム”と言っただろうか。
日本という国ではあまりにも現実離れしているその光景はあまりにも印象的である。

「…いらないの?」
「ええ。僕にはそういう趣味はないので…」
「そう…なの?」

小首を傾げながら一歩、また一歩と近づく彼女の足取りは大変おぼつかない。
人によってはそれだけで恐怖するのかもしれない。
目の前で止まったは自分の身長より遥かに小さかった。

「ねぇ、食べないの?」

ぐりん、と首を真上にある僕の顔へと向ける彼女。
その大きな黒目は僕を捉え、離さない。

「食べない、の?」
「……」

吸い込まれそうなほどの黒が僕を見つめる。

食べないと答えたらどうなるのだろうか。
とはいえ、人の肉を食べることなどできそうにもない。
悩んだ末に僕が出した答えは、

「食べ、ません」
「そう。それじゃあ」

い  た  だ  き  ま  す

彼女の声を認識すると同時に、僕の腕はありえないほどの力で引きちぎられた。
薄れゆく意識の中、僕は自分の腕を食べる彼女と僕から溢れる赤を見つめていた。

あとがき(以下反転)

無性にグロテスクな話を書きたくなった結果がこれです。
なぜ相手が骸なのかは私にも謎です(笑)

2012.05.07