!!」

誰かに名前を呼ばれた気がしてはゆっくりと目を開いた。
すると、そこには彼女の顔を覗き込む雲雀が居た。

「雲雀さん…?私…一体…」
「あれを見て、倒れたんだよ」
「倒れ…」

その瞬間、の脳裏に先程の光景が蘇った。
思い出すだけで目眩を覚える。

血にまみれた部屋に、2つの肉塊。
それら――肉塊と化していたものは彼女の両親だった。

は1つ息を吐くと立ち上がり、ドアへ向かった。

「どこ行くの?」

雲雀の問いには何も言わず少し俯き、ドアを開いて部屋を出た。
その瞬間、錆びた鉄のような嫌なにおいがまとわりつく。
あまりのにおいの酷さに顔をしかめつつも階段を下り、リビングへ向かった。
足音を聞くと、どうやら雲雀は付いて来てはいないようだった。

リビングへのドアの前に立つと一度大きく息を吐き出し、ドアを開けてリビングへ入る。
先程と変わらない光景。
壁や床に広がる血の跡に、人であったことでさえ疑わしく感じさせる2つの肉塊。
常人であれば見ることなど到底出来ない。

「……これが、私の両親…なんて信じられないものですね…」

誰に言うともなく呟き、そっと肉塊の一つに歩み寄った。
よく見ると、昨日彼女が出かける前に見た父の服と同一の布が僅かに見える。
はそっとそれに触れようとして、何かが鈍く光を反射しているのを見た。
落ちていたそれを拾い上げた瞬間だった。

「ひぃっ!」

背後から聞こえた少年の短い悲鳴に、は振り返った。
そこには彼女とそう歳の離れていないであろう少年が一人と、黒いスーツを身に纏った赤ん坊がいた。

「おい。一体何があったんだ?」
「あなたは…リボーンさん、ですか…?」
「そうだ」

が尋ねると、赤ん坊はこくりと頷いた。

アルコバレーノ――最強の赤ん坊。

その存在は両親から聞いていた。
そして、そのうちの一人である黄色のおしゃぶりを持ったリボーンという最強の殺し屋が居ること。
その彼が日本でボンゴレ10代目の家庭教師をしているということも。

はその場で立ち上がり、独り言のように呟いた。

「では、そちらがボンゴレ]世…ですか。」
「だったらなんだ」
「……」

リボーンの返答で少年がボンゴレ10代目であることを確信するとは少年に近づき、リビングのドアを閉めた。
近くで見ると、少年はとてもマフィアのボスには見えなかった。
しかし、それでも彼がボンゴレ10代目であるならば、とは決心を固め彼らに告げた。

「わかりました。少し待っていてください。用事が終わりましたら、何があったかお話します」

そう言い軽く頭を下げると、は地下へと下りていった。

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