「ごめん、骸」

彼女が何を言っているのかわからない。
わかりたく…ない。

「あのね、貴方の気持ちが私には重いんだ」

それは君が望んだことでしょう?
君が望んだから僕は僕の全てを君に捧げた。

それなのに、それが重い?
嘘、なんでしょう?
わかってますよ、

「あのさ、嫌いじゃないんだよ?」

わかってる。
は僕を愛しているんですよね。

「私、もう辛いの」

なぜ?
なぜそんな顔をするんですか?

僕といるの、幸せなんでしょう?
なら笑ってくださいよ。

「でもね、あなたが大切だから…友達としていてくれないかな?」

大切?
だったら恋人として側にいればいい。

それが一番僕が望んでいることだってわかっているでしょう?

「無理なら良いんだけどさ」

無理に決まっています。

当たり前でしょう?
もう僕は君とじゃなければ幸せにはなれない。

それに自分が辛い思いをしてまで君の幸せを願えるほどの気持ちじゃない。

「…やっぱり、無理だよね」

えぇ、無理です。
僕の幸せは君といることになってしまっているんですから。

それも、誰よりも近くにいること。
ただの友達になんて戻れる訳がない。

とはいえ、嫌いにもなれない。

さて…どうしたものか。
彼女を僕だけのものにする方法。
彼女が僕以外の人間と接しない方法。

――あ。
一つだけ、ある。

「クフフ…そうだ、そうしたらは僕の…」
「骸…?」

何だか不安げで、心配そうな顔で覗き込む

大丈夫。
もうすぐそんな顔をする必要はなくなります。

そうして僕は三叉槍を手にとり、に向けて突き出した。

グサリと肉に刺さる独特な感触があり、は崩れ落ちた。

「クフフ…クハハハ!」

これで彼女は僕のもの。
その喜びに自然と笑いが込み上げる。

――あぁ、笑っている場合ではありませんね。

僕はを壁にもたれかけるように座らせて、自分も彼女の隣に座った。

、一人で寂しいでしょう?
今行きますよ。

そう心の中で呟くと僕は自分の心臓へ槍を突き立てた。

――、これでずっと一緒ですよ。

六道 骸編 end