暗闇の中、不気味な存在感を放つ大きな屋敷。
森に囲まれたその場所に、オレはいた。

屋敷のドアを開き、中へと入る。
屋敷の中はその外観からは想像できないほど荒れていた。

他の部屋より一層荒れた部屋に入ると、人の気配を感じた。
部屋の中を見渡すと、少女が立っているのが見えた。

?」

自らの名を呼ばれ、少女が振り返る。
そしてオレを見ると柔らかな微笑みを浮かべ、彼女はある一点を指し示した。

その示された方へ視線を移すと、そこには彼女の死体があった……。

夢はいつもそこで終わる。
数日前、彼女と連絡が取れなくなってから毎日同じ夢を見ていた。

だがそれも今日で終わる。
……いや、終わらせる。

骸様の許可を得て、オレは夢に見た屋敷へと来ていた。

屋敷の中は夢で見るより荒れていた。
所々に血痕もある。

なんとなく、その血痕を辿って行くと、のいた部屋の前へと着いた。

ゆっくりとドアを開き、顔をしかめる。
……腐敗臭がする。

が指し示した場所へ行くと、腐りかけた彼女の死体があった。

…」

彼女の体を抱き締める。
腐敗した臭いが鼻につく。

ああ。
もう彼女は帰ってこないんだ、と実感させられる。

こんな荒れ果てた場所で一人眠るのはどんなに寂しかっただろう。
…だからオレに伝えようとしたのだろうか。

「もう一人じゃないよ」

君はもう、一人じゃないんだ。
だから、泣かないで。

そうしてオレは近くにあったガラス片で自らの首を掻き切った。

柿本 千種編 end