「アイス食べに行きませんか?」
夏の真っ盛り、暑さに項垂れていたがオレに訴えかける。
「今からか?」
「アイス食べたいです」
「だから、今からか?」
「みんなも誘います?」
この無視の仕方は肯定か…。
これから和谷の家に集まるのだがどうしようか。
「」
「なんですか?」
「コンビニのアイスでいいか?」
「えー…」
「みんなの分も買って、和谷の家で食べよう」
「そうしましょう!」
どうやらはアイスをみんなで食べたかっただけらしい。
そうと決まれば、早めに家を出なければならないな。
「、出る準備できてるか?」
「はい!」
さっきまで項垂れていたのが嘘のように、は目を輝かせてオレの前に立っていた。
…一体、いつの間に。
「それじゃ行こうか」
「アイス、アイス!」
ハハハ…。
の頭にはもうアイスの事しか無いようだな。
「早く行きましょう!」
そう言うに手を引かれるまま、オレはコンビニへと向かった。
アイスの入った袋を下げながら、和谷の部屋へ向かう。
そういえばも和谷の部屋に行くようになったのはいつからだったかな。
オレが連れて来た事は覚えてるんだが…。
「慎一郎さん、開けますよ?」
「悪い、頼む」
がドアを開ける。
中では和谷と進藤が1局打っていた。
「こんにちは!和谷君、進藤君!」
「伊角さんに!」
「伊角さん、手に持ってるの何?」
進藤の言葉にオレは片方の袋を差し出す。
にも渡そうと思ったが、彼女はいつの間にか和谷の隣で今打っている1局の説明を受けていた。
「、早く食べないと溶けるぞ?」
「はっ!アイス!!」
アイスの事を思い出したはオレに近づいて、じっと見つめてくる。
その様子はさながらペットが主人に餌をねだっているようだ。
「アイス、アイス!」
「ハハハ。わかってるよ」
笑いながらにアイスを渡すと、嬉しそうに目を輝かせた。
「いただきまーす!」
そう言ってはソフトクリームを一口含む。
幸せそうな顔をして…。
そんなの幸せそうな顔を見ていると自然と顔が綻ぶ。
「、口元についてる」
「え??」
「取ってやるから動くなよ?」
が逃げないよう片手をの後ろに回し、彼女の口元についていたアイスを拭う。
「ほら、取れたぞ」
「あ、ありがとうございます…」
は耳まで真っ赤にして俯いた。
こういうところが可愛いんだよな、は。
「伊角さん、そろそろ始めようよ」
「そうだな、始めるか」
進藤がもう待ちきれないかのようにオレに言う。
オレが肯定したことを確認してから進藤と和谷が碁石を片付けた。
「それじゃ、次はオレと伊角さんだ!」
進藤のその言葉で和谷とオレが入れ替わり、オレは進藤と向かい合うようにして碁盤の前に座った。
「慎一郎さん、負けないで!」
「あぁ。それじゃ進藤、始めようか」
オレの言葉と共にオレと進藤の1局が始まった。
――のためならオレは何だってしてやる。