「うぅ…びしゃびしゃ…」

天気予報が外れ、急な土砂降りに見舞われは全身ずぶ濡れになっていた。
隣には同じくずぶ濡れになった伊角がいる。

、大丈夫か?」
「はい…」

体に張り付く服を剥がしながらが答える。

「少し待ってろ」

タオルを持ってくる、と言うと彼は中へ入った。

「気持ち悪いなぁ…」

張り付く服から少しでも水を落とそうと服の裾を搾る。
少しではあるが水が染み出す。

そんなことをしていると、いつの間にか伊角が戻ってきていた。

「凄いな…」
「そうですね…」

そう言いながら顔を上げ、は赤面した。
そこにいたのは、なぜか上を脱ぎ、タオルを首にかけた伊角だった。

「いいい、伊角さん!?どどどどうしてそんな格好を!?」
「濡れてたから脱いできた」

動揺を隠すこともせずにが問うと、伊角は何でもないかのように言う。

「そんなことよりほら、ちゃんと拭けよ?」
「あ、ありがとうございま…す…」

伊角は自身の髪の水滴を拭いながらタオルを差し出す。
はそれを受け取るが、なかなか髪を拭こうとはしなかった。

「どうした?拭かないのか?」
「い、いえ…」
「あぁ、それとも…」
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伊角はそこまで言うと、に顔を近づけた。
急な伊角の行動に対する驚きと恥ずかしさから、は思わず目を瞑る。

「オレが隅々まで拭いてやろうか?」

耳元でそう囁かれれば、の顔が赤くなる。
その様子を見て、伊角はクスリと笑う。

「本当には可愛いな」
「か、からかわないでくださいっ!」

顔を真っ赤にしながらは叫ぶ。

「ハハハ。このままだと風邪ひくし、一緒に風呂に入るか?」
「だから!!」
「言っておくけど、本気だから」

真顔でそんなことを言われては、それ以上何も言えない。

「なんてな。冗談だよ」
「もう!先に入らせてもらいますからね!」

が怒りながらその場を離れ、後には伊角一人が残された。

「やっぱり可愛いな。それにしても、」

危なかった、と伊角が呟く。
彼が何についてそう呟いたのか知るのは彼自身のみ。

雨と君

――暖かい飲み物用意しておかないとな。